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パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

ひだまりが聴こえる -幸福論-

 

ひだまりが聴こえる-幸福論- (Canna Comics)

ひだまりが聴こえる-幸福論- (Canna Comics)

 

祝☆続刊。

正直にいうと、幸せになることを、幸せになるために努力することを恐れない太一がまぶしくて、それと同じくらい胸が苦しい。

常識や正論を蓑にして、努力することから逃げている自分を晒されるようで。太一が当たり前に見ている世界は、私にはすでに見えない世界なんだなぁ。

でも、そういう気持ちになるのも、「心を動かされる」ってことだろうから。

いつもやかましいくらい元気な太一が、恋人っぽい雰囲気になったときだけは、ひっそり静まってしまうのがかわいい。次の本では、もっと恋人っぽいラブなふたりも見れるかな。たのしみ。

累る -kasaneru-

 

累る-kasaneru- (プラチナ文庫)

累る-kasaneru- (プラチナ文庫)

 

凪良ゆうの小説は、いつだってあたらしい。

BL小説は漫画以上に多産傾向なうえに、BL特有の様式美などもあり、書きつづければどうしたって内容が似通ってくるもの。(もちろん、お約束とは王道に通じる道であり、BLにおいて「ベタ」はいくらでも美点になりえるので、それが必ずしも悪ではないのだが。)そんななかで、凪良さんはつねにあたらしい何かにチャレンジし続けている。

この向上心とサービス精神こそが、人気の理由なんだろうな。

今作もこれまでにはない新境地。過去と現在が交錯するホラーBLである。

山間の集落の村はずれのお堂のなかで、夜ごと繰り返される淫靡な宴…といえば、夜光さんや沙野さんあたりが得意とするジャンルという印象だったので、凪良さんってこんな引き出しももってるんだな~と興味深く読んだ。

グラウンドの空

 

 

グラウンドの空 (角川文庫)

グラウンドの空 (角川文庫)

 

あさのあつこが描くピッチャーとキャッチャーのあいだには、言葉にはしがたいつながりがあるように思える。

彼らはボールを介して、言葉以上に語り合う。

勝ち負けだけじゃない。楽しむためだけでもない。うまく言葉にならない感情をボールにこめて放り、それを懸命にうけとめようとする。

ときにはじいてこぼしてしまったり、まったくあさっての方向にとんでいったりすることもある。それでも、キャッチャーはピッチャーを信じてミットを構える。ピッチャーはそのミットめがけて全力で投げ込む。

言葉は多すぎる。言葉じゃ足りない。わけもなく焦燥に駆られていた日々を思い出した。

金の国 水の国

 

待ちに待った岩本先生の新刊がすばらしすぎて、私はほんとうに日本にうまれてきてよかった。

感想は本宅にて。 〈感想〉

ちはやふる 31-32

 

ちはやふる(31) (BE LOVE KC)

ちはやふる(31) (BE LOVE KC)

 
ちはやふる(32) (BE LOVE KC)

ちはやふる(32) (BE LOVE KC)

 

瑞沢高校かるた部の三年生にとって、最後の夏。

太一不在のまま、最後の団体戦を迎えた千早たち。懸命に「部長」であろう、みんなのための自分であろうとする千早が、たのもしくて、なんともせつない。

これまで太一が背負ってくれていた役割まで、千早はぜんぶ自分が果たそうとしてたんだな。たとえそこにいなくても、ずっといっしょだった。

最後の戦いにたいせつな仲間がいないのはすごくさみしかったけど、「ちはやふる」はかるたの奥にあるひとりひとりの「人生の戦い」を描く漫画だ。

部活のあとにも、人生はつづいていく。そして、その後の人生のほうがずっとずっと長いのだ。

掴みたい「未来」のために、太一も千早たちも、自分にできる限りのことをやろうとした。この日の選択はいつか彼らの人生の糧となり、実を結ぶはず。

その証拠に、みんなが自分の行くべき道を掴み始めている。

成長って、ひとにとっての希望そのものですね。彼らを見ていると、心からそう思う。

薔薇色じゃない

 

薔薇色じゃない

薔薇色じゃない

 

タイトルどおり、「人生は薔薇色」でもなければ、「愛こそすべて」というわけでもない。愛や夢だけで、人は生きていくことはできない。

それでも、そんな現実の厳しさに打ちのめされそうになるとき、愛する人がそばにいてくれるなら、立ち向かい、乗り越えていく力にもなる。

苦くてしょっぱくて、最後はあまい。

まるで人生のフルコースのような、どこにでもある、でもとっておきの恋の話。

放課後はいつもふたり

 

放課後はいつもふたり (EDGE COMIX)

放課後はいつもふたり (EDGE COMIX)

 

背中までそばかすがあったり、あばらが浮いていたり、褐色だったり。理想化されすぎない、その人だけの個性のある身体にエロスを感じる。

基本的にやってるだけのエロ漫画ではあるものの、トイレの個室や研究室の床、大自然の空の下まで、思い立ったが吉日といわんがばかりの豊富なシチュエーションが揃っており、最後まで飽きずに読めた。

ポルノグラファー

 

ポルノグラファー (onBLUEコミックス)

ポルノグラファー (onBLUEコミックス)

 

純情な大学生が大人の色気漂う小説家とふたりきりの部屋で、先生が読み上げる官能小説の代筆を行う。

いったいどこの官能小説だよ!!とツッコミたくなるほどに、王道をゆく浪漫ポルノBL。しかし、気品と翳りを孕んだ新人離れした画力と、暴走する若者の妄想のミスマッチがおもしろく、まったく古臭さを感じさせない。

またまたおもしろい作家さんが出て来ましたね~!

アケミちゃん

 

アケミちゃん (ダリアコミックス)

アケミちゃん (ダリアコミックス)

 

攻めがガチのクズすぎて、なかなか己の倫理観とのせめぎ合いに折り合いがつかなかったのだけど、母ちゃんがばっさり云ってくれたおかげでいくぶん溜飲が下がった。

罪は悔い改め、償われるべきものであると思う反面、感情のうえではなかなかゆるすことができない自分がいることを実感させられたなぁ。

悪事に手を染めてしまったとき、その事実と真正面から向き合える人間はすくない。

自分と罪そのものを切り離すことができないからだ。アケミのように自分を責める者、蒼介のように「なんで自分ばかりが」と罪から逃避しようとする者。かたちは違えど、ふたりとも過去の過ちにとらわれてもがいている。

すべての人間が正しく生きられるわけなじゃない。間違って、蔑まれて、それでもゴミクズみたいな自分を引きずりながら、生きていく。

自分自身ですらゆるせない蒼介の罪にゆるしを与えた深夜のキスシーンの、場末のバーには似つかわしくないほどの静謐さ。どんなクズ野郎だとしても、アケミが自分で自分にかけた枷を外すには、蒼介のずうずうしいほどのあきらめの悪さが必要だったんだろうな。

そう思えば、たとえ世界中から顧みられなくとも、完璧な恋人同士だ。

大奥 10-13

 

大奥 10 (ジェッツコミックス)

大奥 10 (ジェッツコミックス)

 

 

大奥 11 (ジェッツコミックス)

大奥 11 (ジェッツコミックス)

 

 

大奥 12 (ジェッツコミックス)

大奥 12 (ジェッツコミックス)

 

 

大奥 13 (ジェッツコミックス)

大奥 13 (ジェッツコミックス)

 

どんな貴い志も、ひとの底知れぬ欲望のまえでは、路傍の花のようにたやすく踏みにじられていく。

この漫画が描こうとしているのは、人間の人生よりもさらに長大な「時代」や「歴史」といったものであるような気すらしてくる。たったひとりの人間になしうることはほとんどなく、幾多の意志と願いが重なりあい、機を得てようやくかたちを成す。

そう考えると、人生というもののはいったいどこまでつづいているのでしょうね。

この漫画を読んでいると、人間の計り知れぬ気高さと罪深さに、震える心地がします。