パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

花と蝶

花と蝶 (あすかコミックスCL-DX)

花と蝶 (あすかコミックスCL-DX)

格闘系男子×ちょっとホラー!?
こう書くと異色っぽい取り合わせですが、基本的には大型ワンコ×ツンデレ男子のいつもの高永さんなのでご安心を。主人公CPは安定のラブコメっぷりなので、個人的には堅物従者×浮世離れ美人な脇のふたりが気になります。

浄化系彼氏

オメガバースプロジェクト掲載作。
Ωを理由に恋人に捨てられた万代は、お人好しのβのサラリーマン・長岡の家に転がり込む。腹いせに身体をつかってたらしこんでやろうという目論見どおり、あっけなく万代は長岡をたらしこむ。しかし、元彼とはちがって誠実そのものの長岡に、万代はうしろめたさを覚えるようになる。
オメガバースプロジェクトも、はじめは目新しさから手当たり次第に読んでいたのだけど、だんだんと「これ、べつにオメガバースじゃなくてよくない…?」と思ってしまう作品がふえてきた気が。
正直この本も、DTリーマン×ひねくれビッチの現代ものBLだとしても、何も違和感ないもんな…Ωだから捨てられたの「Ω」を「男」に変換するだけですんなり読めてしまう。もちろん、αみたいなスーパー攻め様よりβっぽいヘタレ攻めの方が好きな人もたくさんいるだろうから、あえてそこを攻めた目の付け所は悪くないとは思うんだけど…居酒屋店長がαの世界に階級差なんてあってなかろうという気持ちにもなる。
オメガバースってファンタジーや階級差ロマンスと親和性高そうなのに、一般誌掲載のBLと同じで、やっぱりその手の特殊設定ものって少ないんだよなぁ。
都合のいい記号として使うだけではなく、世界観の一部にオメガバースが取り入れられているような作品が読みたいんだけどな。

半神

半神 (小学館文庫)

半神 (小学館文庫)

名作と名高い萩尾望都の短編作。シャム双生児として生まれたふたりの少女の人生を、わずか16頁で見事に描き切っている。
同時収録のSF短編作も、絵はもちろん、言葉のひとつひとつまでが芸術のようにうつくしく磨き抜かれている。読んでいるあいだのひとときだけ、魂が宇宙に彷徨いだすような心地がする。

嫌いなものたくさん

嫌いなものたくさん (Charaコミックス)

嫌いなものたくさん (Charaコミックス)

コミュ障の落ちこぼれ浪人生・多加良は、コンビニのバイトすら年下の後輩・蜂谷に助けられる始末で、凹むばかりの毎日。唯一の楽しみは、レシピサイトを参考に料理を作ること。
ある日、女の子と揉めた蜂谷を部屋に泊めることになった多加良は、悩むくらいならいちど踏み外してみちゃえばいいと、蜂谷からキスをされ…。
遊び馴れているようでほんとうの恋はまだ知らない蜂谷と、正真正銘のピュアっこ・多加良のごはんが繋ぐ恋のはなし。
同時収録の堅物×お調子者の再会愛「なんだかとっても大嫌い」もかわいかった。村上さんの描く黒髪堅物攻めが大好きです!

真夜中は相思相愛

真夜中は相思相愛 (花音コミックス)

真夜中は相思相愛 (花音コミックス)

ヒモ生活で食いつなぐイケメン大学生×堅物な眼鏡リーマン。
身体の関係からはじまったふたりのあまい同居生活。
真面目なことしか取り柄がないと思っていた貴明さんが、いつもお気楽な瑠以に自分の気持ちに素直になることを教えられていく。あまやかすつもりが、あまやかされてしまう年下攻め。
ある意味、BL版きみはペットですな。

オゲハ 1-2

オゲハ (1) (it COMICS)

オゲハ (1) (it COMICS)

オゲハ (2) (it COMICS)

オゲハ (2) (it COMICS)

日常とまじりあう狂気が癖になる。
無気力男子のキジは、公園で薄汚れたアゲハに似た蝶人間を見つける。異形に慄くことも、弱った蝶に同情するでもなく、ただおもしろ半分でキジはオゲハと名付けた蝶人間を飼うことにする。
この作家さんの真顔で冗談言う感じがすごく好きだ。キジはオゲハに悪意を抱いているわけじゃないけど、同じ人間だとも思っていない。わざわざ拾ってきたというのに、好奇心以上の情がキジから感じられないのだ。
キジのオゲハへの無関心さには彼自身の生い立ちも影響している気がして、ふたりを包む虚無にふと背すじが冷える瞬間がある。

でぃす×こみ 1

少年漫画家志望の妹のペンネームを拝借して漫画家デビューを果たした兄が描いたのは、なんとBLだった!?
ゆうきまさみがBL漫画を!?作中作のBLページはすべてカラー収録。しかも、着色はすべてオノ・ナツメ灰原薬ら、有名作家の手による豪華仕様。冒険というよりもはややけくそ(笑)な企画力にのせられて、まんまとご祝儀買いしてしまいました。
こんな無理難題をふっかけられても、しっかりBLの?ツボ″を押さえたネームを仕上げてくるところは、さすがの大ベテラン。正直、書いてる本人に萌えがないのが丸わかり(笑)なので、BLを読んでいる感じはまったくしないんですが、萌えでごまかされない分、構成の巧みさや演出力が際立っています。
今後の進退がかかったデビュー一作目のネームをめぐって、兄妹が試行錯誤する第二話「愚王×賢臣」(これ、CP表記に則るなら左右逆だな…)では、ゆうき先生の物語づくりのエッセンスがそのまま漫画になっていてすごく贅沢。なるほど、演出っていうのはただ派手に盛り上げるのではなくて、ほんとうに伝えるべきものにスポットをあてる作業なんだな。
トリッキーなアイデアで目くらましされているものの、ふたを開けてみればじつに正統派にしてユーモアに満ちた漫画家漫画だった。
ただ、個人的には「タンクトップ男子受け」って、そんなにスタンダードでもないと思うけどな!?

あとかたの街 1

あとかたの街(1) (KCデラックス BE LOVE)

あとかたの街(1) (KCデラックス BE LOVE)

12歳の少女の日常をとおして戦争を描き出す、等身大の名古屋空襲。
滅多に食べられない卵焼きに大喜びしたり、国民服をかわいくアレンジしたり、女学生のお姉さんたちに憧れたり。たとえ戦時中であっても、少女たちが心を躍らせるものはいまとなんら変わらないんだということに、たまらなく胸を締めつけられる瞬間がある。
当たり前のことが、当たり前にではなくなっていった時代。私たちには遠い昔のことのように思えるけれど、その過去はいまもかつて少女だった方たちの胸のなかにある…。
そういう人たちと同じ時代に生きている以上、私たちには知る義務があり、伝えていく使命がある。とつとつと日常を描いた漫画であるにも関わらず、いまこの漫画を描くということに作者の強い想いを感じる。