ちはやふる 31-32
瑞沢高校かるた部の三年生にとって、最後の夏。
太一不在のまま、最後の団体戦を迎えた千早たち。懸命に「部長」であろう、みんなのための自分であろうとする千早が、たのもしくて、なんともせつない。
これまで太一が背負ってくれていた役割まで、千早はぜんぶ自分が果たそうとしてたんだな。たとえそこにいなくても、ずっといっしょだった。
最後の戦いにたいせつな仲間がいないのはすごくさみしかったけど、「ちはやふる」はかるたの奥にあるひとりひとりの「人生の戦い」を描く漫画だ。
部活のあとにも、人生はつづいていく。そして、その後の人生のほうがずっとずっと長いのだ。
掴みたい「未来」のために、太一も千早たちも、自分にできる限りのことをやろうとした。この日の選択はいつか彼らの人生の糧となり、実を結ぶはず。
その証拠に、みんなが自分の行くべき道を掴み始めている。
成長って、ひとにとっての希望そのものですね。彼らを見ていると、心からそう思う。
放課後はいつもふたり
背中までそばかすがあったり、あばらが浮いていたり、褐色だったり。理想化されすぎない、その人だけの個性のある身体にエロスを感じる。
基本的にやってるだけのエロ漫画ではあるものの、トイレの個室や研究室の床、大自然の空の下まで、思い立ったが吉日といわんがばかりの豊富なシチュエーションが揃っており、最後まで飽きずに読めた。
ポルノグラファー
純情な大学生が大人の色気漂う小説家とふたりきりの部屋で、先生が読み上げる官能小説の代筆を行う。
いったいどこの官能小説だよ!!とツッコミたくなるほどに、王道をゆく浪漫ポルノBL。しかし、気品と翳りを孕んだ新人離れした画力と、暴走する若者の妄想のミスマッチがおもしろく、まったく古臭さを感じさせない。
またまたおもしろい作家さんが出て来ましたね~!
アケミちゃん
攻めがガチのクズすぎて、なかなか己の倫理観とのせめぎ合いに折り合いがつかなかったのだけど、母ちゃんがばっさり云ってくれたおかげでいくぶん溜飲が下がった。
罪は悔い改め、償われるべきものであると思う反面、感情のうえではなかなかゆるすことができない自分がいることを実感させられたなぁ。
悪事に手を染めてしまったとき、その事実と真正面から向き合える人間はすくない。
自分と罪そのものを切り離すことができないからだ。アケミのように自分を責める者、蒼介のように「なんで自分ばかりが」と罪から逃避しようとする者。かたちは違えど、ふたりとも過去の過ちにとらわれてもがいている。
すべての人間が正しく生きられるわけなじゃない。間違って、蔑まれて、それでもゴミクズみたいな自分を引きずりながら、生きていく。
自分自身ですらゆるせない蒼介の罪にゆるしを与えた深夜のキスシーンの、場末のバーには似つかわしくないほどの静謐さ。どんなクズ野郎だとしても、アケミが自分で自分にかけた枷を外すには、蒼介のずうずうしいほどのあきらめの悪さが必要だったんだろうな。
そう思えば、たとえ世界中から顧みられなくとも、完璧な恋人同士だ。
大奥 10-13
どんな貴い志も、ひとの底知れぬ欲望のまえでは、路傍の花のようにたやすく踏みにじられていく。
この漫画が描こうとしているのは、人間の人生よりもさらに長大な「時代」や「歴史」といったものであるような気すらしてくる。たったひとりの人間になしうることはほとんどなく、幾多の意志と願いが重なりあい、機を得てようやくかたちを成す。
そう考えると、人生というもののはいったいどこまでつづいているのでしょうね。
この漫画を読んでいると、人間の計り知れぬ気高さと罪深さに、震える心地がします。
初恋大パニック
引きこもりから一転、デビュー作で大ヒットを記録した注目の新人作家・藤原壮介の担当となった敏腕編集の小宮山旭。打ち合わせ初日、良家に生まれ、容姿にも才能にも恵まれたぽっと出の新人に対して、やっかみまじりにこぼした悪態を、藤原本人に聞かれてしまう。
お互いの第一印象は最悪。でも、くやしいが藤原の才能はほんもの。
編集者として、作家生命にかかわる第二作目をよりよいものにするべく旭は奮闘するのだが、旭が自分をバカにしていると思い込んだ藤原は、まったく旭に心を開こうとしない。
いけすかないと思っていたはずの相手なのに、出会うたびにイメージとは異なる互いの素顔を知り、やがて惹かれあっていく。
ハリウッドのラブコメ映画のような明るくハッピーなお話で、とても楽しかった!
打ち合わせでの何気ないやりとりからときめきが生まれていく丁寧な描写は、月村さんの小説ならではですね。
ほんとうは恋愛経験すらないくせに、無理して大人の男を装う小宮山さんがおかしいやらかわいいやら。藤原くんともども翻弄されっぱなしでした。
来たる晴れかけの明日よ
廃品回収店のイケメン従業員×お人好し店主。
このカップリングはちょっと、「くいもの処明楽」を彷彿とさせるな~。デキる年下攻めっていいですね。
上田さんにはオヤジ受け属性がある気がして、期待している。
同人誌セレクション ヤマオリ
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大好きな火黒作家さんの薄い本セレクション。
再販の見込みのない本ばかりまとめてくれたので、すごくありがたい…。
卒業後の火黒はどれだけ想像しても妄想が尽きなくて、ほんとうに何通りでも楽しみたい。かがみくんは言葉より先に手が出るタイプだし、くろこさんは思ってもなかなか口には出さないので、やることやっておいてなお両片想いなふたりがたまらない。
もだもだしっぱなしの恋模様、ごちそうさまでした!