パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

恋人の事情

恋人の事情 ─ 兄弟の事情 (2) (ディアプラス文庫)

恋人の事情 ─ 兄弟の事情 (2) (ディアプラス文庫)

渡海さんの十八番「兄弟」もの。
自分にとってはちと苦手分野である。弟×兄なら下克上要素が加味されるぶん多少気安くとれるのだけど、兄×弟は腰が引けがちだ。1作目の「兄弟の事情」を読んでおもしろい!と喜んでいたにも関わらず、またしても長らく積んでしまっていた。
いや〜、でもやっぱりおもしろかった!渡海さんの持ち味がぎゅぎゅっと詰まっている。
せっかく恋人同士になれたのに、紬里は和臣に疎んじられたくなくて顔色を窺ってばかり。和臣も、びくついてばかりの紬里にだんだん苛立っていく。
正反対であるがゆえに惹かれあったかのような二人だけど、その実まるで、隣合うパズルのピースのよう。互いの欠けた部分は、相手が握っている。紬里に世界を与えたのが和臣であるように、今いる和臣をつくったのもまた、紬里だ。たった一人のひととの出会いが、彼らの生き様を決めてしまった。
和臣の傍若無人さの理由もわかって、すごくすっきりした気持ちで本を閉じたのであった。