パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

海に還ろう

海に還ろう (アイノベルズ)

海に還ろう (アイノベルズ)

母に連れられ、都会から小さな港町へ越してきた泣き虫な青海を迎えたのは、太陽みたいな野生児・勇作だった。
村ぜんぶが顔見知りの狭小な共同体のなかで、いつもいっしょに育った幼馴染みってのがツボ直撃。自分がじつは「よそ者」であることに、埋めがたい疎外感を感じている片割れ、というのも定番だけど、やっぱりたまらなく好きだ。
夏の海で催される古より伝わる神事と絡めて、ノスタルジックに綴られる、20年に渡る長い長い恋のお話。4歳、13歳、23歳と時系列で子どもから大人への成長を追っているのだけど、差し挟まれる金さんのイラストがまたいいんだ。子どものころのやわらかなほっぺた、十代の若木のような瑞々しさ、二十歳をこえてたくましさの中に色気を湛えた眼差し。
このかけがえない季節すべてをともに駆け抜けたっていうんだから、幼馴染ってほんとに神秘的。