パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

ロマンティックな七日間

ロマンティックな七日間 (クリスタル文庫)

ロマンティックな七日間 (クリスタル文庫)

恋も脚本の仕事もまったく行方の見えない状況に、不安ばかりが先立って身動きがとれなくなる裕也。
やっと訪れたチャンスすら、失敗した場合のダメージを想像して、手を伸ばすことができない。裕也の煩悶は彼自身のネガティブ思考からきているのだけど、根暗な自分としてはものすごく身につまされてしまい、他人事と思えなかった。
裕也が最後に見せた書くことへの確信と希望は、たしかに剛さん自身の物語る理由でもあるんじゃないか。
「日常の中にある風景から、人間の真実を描き出すこと」。この確固たる信念があるからこそ、あれだけ量産してなお、剛しいらの作品からしっかりした骨格が損なわれることがないんだろう。
たった七日間だけど、とても丁寧な恋の話。