パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

それは言わない約束だろう

それは言わない約束だろう (ディアプラス文庫)

それは言わない約束だろう (ディアプラス文庫)

芸人BLシリーズ第3弾。
脚光を浴びる者があれば、夢を諦める者もいる。むしろ舞台を去っていく者のほうが大多数を占めるのだろう。この本に描かれているのは、そうしたスポットライトの影に隠された物語。
大学を中退して芸人を目指した竜一だが、31歳になっても鳴かず飛ばず。夢は楽しく輝かしいばかりじゃない。ときに辛く、苦しいものにもなる。自分には夢がないと焦る大学生のミヤちゃんに、竜一は優しく語りかける。

「確かに、夢とか好きなことて、ないよりあった方がええんやろうけど、夢があるんも良し悪しや。夢があったらそんでええってもんでもないしな」

酸いも甘いも噛分けた大人だからこその一言。学生時代もはるか遠くになり、竜一の台詞が身に沁みる。