パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

花のみぞ知る 1

花のみぞ知る 1 (ミリオンコミックス  CRAFT SERIES 43)

花のみぞ知る 1 (ミリオンコミックス CRAFT SERIES 43)

ああ〜!焦れ焦れする!!ジタバタ!
この一冊では何がどうというほどのことは起こらない。けれど、大気のさざめきすら描きこんでしまったかのような叙情性滴る世界にすっかり酔わされた。
表紙絵になっている土手で有川と御崎が花を摘むシーンがすごくよかった。風のにおいや、川の流れる音や、日差しのあたたかさまで感じとれそうだ。
有川に引っ張られて御崎が河原にやってきた頃にはまだ日も高く、ささやかな事故によって御崎が土手を去っていった頃には、すっかり空が夕焼けに染まっている。「光」と「時間」という本来かたちにできないはずのものが、紙のうえに見事に描き出されている。言葉や記号(たとえば、空に黒いV字を飛ばせて「カー」と書き添えるだとか)なしに、陰影だけでこれほどに精緻な世界観を築き上げる技量に、脱いだシャッポが山積み。
芽生えたばかりの二人の恋がどんな花を咲かせるのか、はやく見てみたくてうずうずする。