パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

同人誌4冊

ななつのこ合唱団「千金の夜」(上)(下)
BLというよりJUNEという言葉の似合うシリアス長編。
今市子らしくあらゆる登場人物たちが複雑に絡み合い、こんがらがった人間関係が展開されている。不義密通の子として生まれ、妻と子も失った高木。帰る場所を失くして点々としていたところを、高木に拾われた松永。ともに家族の縁に薄い似たもの同士の二人の奇妙な同居生活。
今市子の作品の根底にあるのはやはり「家族」なんだな。


青空軍団「やんだと!」(上)(下)
とーちゃんジャンボやんだの学生時代ってどんなだったんだろうなあ、とずっと妄想していた。
見事なファイナル・アンサーです!こうして見事に本編の「余白」を埋めてくれる作品が読めるのが、二次創作の醍醐味だなあ。
神社の階段を昇りきったことろから見下ろした町のパノラマが、とーちゃんがかつて眺めたであろう異国の波止場の風景に変わるシーンがすばらしい。脱帽するしかない表現力。このひとコマでがっしり心をつかまれた。
「ずっと変わらず」なんて思っていなかったとしても、まだまだいっしょにバカやっていられると思っていた友達にイチ抜けられてしまったことへの言葉にならない焦燥や嫉妬。淡々と過ぎてゆく日々にノイズのように紛れ込む不可解な感情。「日が暮れたらバイバイ」なんて、あたりまえにくりかえしてきたことがやりきれなく感じられる。
この人はほんとうに、くすぶってる人間描くのがうまいなあ。
とーちゃん、あんた罪な男だぜ!