パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

泣くのはおよしよ仔リスちゃん

泣くのはおよしよ仔リスちゃん (マーブルコミックス)

泣くのはおよしよ仔リスちゃん (マーブルコミックス)

表紙は絵本みたいだけど、中身はれっきとしたBL漫画。
藤子・F・不二雄は児童向け漫画を描く傍ら、「ミノタウロスの皿」や「流血鬼」といった青年向けのSF作品も多数発表している。青年向けの作品群はコメディを中心とした児童向けの作品とは異なり、かなりシリアスでダークな内容も含まれる。しかし、絵柄に関しては、青年向けも児童向けも同じ。
ギャグ漫画のようなキャラクターとシリアスなストーリーが響き合って、厳しい現実を描きながらも人間への愛情を忘れなかった藤子・F・不二雄ならではのユーモアとペーソスに溢れた作品に仕上がっている。
さて、またしても、大風呂敷を広げてしまったか。
この漫画を読んでいて、私は思わず、F先生のことを思い出してしまったのです。
アユヤマネさんのぬいぐるみのような四頭身キャラクタも、ボーイズラブ的にはどうなんだろう?と敬遠してしまっていたのだけれど、読んでみれば、あら不思議。切なさがきらめく物語とほのぼのとした絵柄が見事にかみ合ってとてもおもしろかった。
絵柄で避けてしまってはもったいない良作。過激なラブシーンより、二人の間に漂う空気に隠微さを嗅ぎ取りたい!という時にぜひ。