パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

いじめてみたい

またまた渡海奈穂の初期作。ほんっとーに渡海さんは高校生好きだな!
大好きだった幼馴染みに裏切られ、田舎の私立男子校へ転校した矢島。勉学第一の個人主義な都会の進学校に通っていた矢島は、球技大会にプール開きに合唱コンクールにと次から次へと学校行事が繰り出されるお祭り騒ぎに馴染めない。
どうせすぐ卒業するんだから、とクラスメイトの名前もろくに覚えようとしない矢島にとって、唯一の天敵はクラスメイトの実原だ。頭が良くて優しくて教師にも一目置かれる人気者が、矢島にだけは何かにつけて嫌がらせをしかけてくる。自分のことをほうっておいてくれない実原に苛立ちながらも、実原の巧みな挑発に乗せられるうち、矢島は少しずつお祭り騒ぎの日常に楽しさを見出し始める。
このあらすじだとごくふつうの学園青春小説のようだけど、実原の矢島への「意地悪」の理由が自から人に関わろうとしない矢島の傲慢を窘めるためだけでなく、「矢島の泣き顔に興奮する」というサド心ゆえでもあったというところがBLクオリティ。
後半の巻きがやや唐突だったかな。結末はどうしたって読めてしまうだけに、転の部分をもっと盛り上げてもよかったのでは。