パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

蠱蟲の虜〜螺旋への回帰〜

蠱蟲の虜―螺旋への回帰 (リンクスロマンス)

蠱蟲の虜―螺旋への回帰 (リンクスロマンス)

本を読むとき、読者は紙面に書かれた文字をたよりにイマジネーション働かせて描かれた世界を再構築する。
次々飛び込んでくる情報に圧倒され、本を手にしても読み進められないことが多かった。漫画や映画といった娯楽に比べ、読書はぐっと没入しなければならない作業だ。本を読むには、心落ち着けられる状況が必要なんだと実感する。
現代物よりいっそ純粋なファンタジーのほうが、現実と切り離して楽しめるかもしれないとひらめき、積みっぱなしにしていた六青みつみ「光の螺旋」シリーズを引っ張り出した。

「光の螺旋」シリーズの中でも主人公の受難度が高い「蠱蟲の虜」の続編とあって、健気受けへの鞭打ち三種の神器がしっかり盛り込まれたハードな内容ながら、ストーリーから言葉選びに至るまで緻密に練り上げられた異世界でのひとときを満喫した。
どんな苦境に立たされようと、懸命にともに生きようとするカイルとリーンのひたむきな愛情はもちろん、光だけではなく闇もまた、人の世に理由をもって存在しているとする彼らの世界の理についての物語もとても魅力的で、BLとしてもファンタジーとしても読み応えがあった。