パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

うちの王子いりませんか

うちの王子いりませんか(キャラコミックス)

うちの王子いりませんか(キャラコミックス)

木下さんはすばらしい漫画家さんだ。
執筆量が多く定期的に新刊を届けてくれるし、大きな当たり外れがなく安定した萌えを供給してくれる。しかし、ファンとしてはもう一歩踏み込んだものを読んでみたい気持ちもあったりするわけで。
キャラクターが立ってるので萌え漫画としては過不足ない仕上がりだが、大道具・小道具が大味だから物語としての説得力に欠けるのだ。
舞台である「某公立校」というのが不良率の高い商工系なのか、それともチャラめの共学校か曖昧。生徒たちの制服の着こなしもイマドキのシャレオツ高校生なのか、一昔前のヤンキーファッションなのか、いまいちつかみどころがないし…
こういう細部の描きこみは物語にリアリティをもたらす重要な要素になる。BLは夢物語だけど、まるっきり「嘘」じゃだめだよね。読者に「夢」を見させるためには、「嘘」をリアルと思い込ませるための舞台装置や演出が必要。
木下さんの持ち味は非日常の華やかさとは対極の、地に足ついた描写だと思っている。だからこそもう少し拘って描き込めばぐっと密度の濃いものができるんじゃ…と、ついつい夢想してしまうのだ。
ありのままの君も十分かわいいけど、ちょっとおめかしすればもっとイケてるんじゃない?と私の心のプレイボーイが下心をだしてしまうのでした。