パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

伊平次とわらわ 1

わっはっはっは。
こりゃ愉快痛快、奇想天外!
墓場の外れで暮らす墓守の伊平次と、野良犬にとり憑いた自称・中納言の姫君の「わらわ」が繰り広げる珍道中。
いやもう、心は気位の高い姫君様だけど、食い意地のはったバケ犬にしかみえない「わらわ」の公家ことばがおかしくっておかしくって。メーワクな物の怪につきまとわれてうんざりしながらも、しっかり面倒見てしまっている伊平次の世話焼き体質もまた好ましい。
異端と常識人の組み合わせは、「ベル・デアボリカ」のツヴァスとヴァルカナルにも通ずる坂田さんの黄金パターン。傍若無人なのに憎めない異端児と、そんな相手に振り回されながらも見捨てることの出来ない常識人の間に、奇妙な信頼関係が芽生えてゆく。こういうのを描かせるとほんとうに天下逸品です。