パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

涕涙まくら

涕涙まくら (オークラコミックス)

涕涙まくら (オークラコミックス)

表題作も湿った空気がむんむんな禁断愛でよかったのだけど、なんといっても「夏に死にゆく物語」がすごい!近未来を舞台にしたSFボーイズラブなのかと思っていたら、あれよあれよと思いもよらぬ方向に物語が転がってゆき、あっと驚きの結末に。いや〜、一本とられました。
都の条例への問題提起として描かれたというこの作品。規制に次ぐ規制によって人類からあらゆる表現や言論の自由を剥奪した末に、禁止することを禁止するという「禁止法禁止法」が銀河系政府によって施行され、あらゆる禁則事項でがんじがらめにされた地球という星そのものが爆破されてしまう。
「そんなアホな〜!」と笑ってしまうトンデモ作品を装いつつも、一方的、画一的な規制は人々が自分で考えて選択する力を失わせ、抑圧への反動を生むという痛烈な風刺が込められている。