パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

ハートのトートロジー

ハートのトートロジー (Canna Comics)

ハートのトートロジー (Canna Comics)

お茶と夕飯の間の暇つぶしにでかけた、書泉ブックマートで先売りをゲット。
カシオさん漫画には恋することのみっともなさ、いたたまれなさがつまってる。
青い欲望に苛まれてぐらぐらしてるくせに、いったいどこまで触れていいものかわからなくて手も足もでない。やっと触れたとおもったら暴走してしまって、相手の涙に大慌て。
かっこいい恋愛なんてできない不器用くんたちのういういしさがたまらない。
表題作は記憶喪失もの。
誰とも馴れ合わずわが道をゆく、クラスの変わり者・月川。「友達はいらない」と公言し教師にも臆することなく自己主張する月川は、ことなかれ主義の春名にとって正直苦手な存在だった。
しかし、何の冗談か、春名は月川から告白されてしまう。
なんとかうまくかわそうとする春名だが、いつもの優柔不断が祟ってつい「いいよ」と応えてしまった。その場凌ぎでしかない返事を後悔していた矢先、月川は事故に遭い記憶喪失に。これまでのとっつきにくさといっしょに、月川の中からは、春名への告白もすっかり消え去ってしまった。これで面倒なことに煩わされずにすむはずなのに、春名は月川の告白を忘れられず…。
これ、もっと長い尺で描けばいいのになぁ。
冒頭の触れれば切れそうに鋭い月川とぼんやり冴えない春名の対比がおもしろく、こりゃ一筋縄じゃいかないぞ、という匂いをぷんぷんさせていたので、あっさり記憶喪失してしまって少し残念。特別な事件が起こらなくても、月川の強烈な性格と春名のコンプレックスだけでじゅうぶん物語になりそうなのに。「春名への恋心」を鍵に記憶喪失前/後の月川の同一性は実証されたものの、記憶喪失以前の月川の頑なさはいったい何ゆえのものだったんだろう…。
いろいろ考えてしまうほど、前半の偏屈月川がいい味出していた。