パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

世界の果てで待っていて 〜天使の傷痕〜

新装版。旧版既読。
イラストが雪舟薫さんから茶屋町勝呂さんに。統一郎と雪彦の刑事時代の掌編「イミテーション」を書き下ろし収録。
まだ両手にあまるほどしかBLを読んでいなかったころこの本と出会い、読み始めたらとまらずに夜を明かした。「ボーイズラブって、なんておもしろいんだ…!こりゃすごい宝の山を見つけたぞ!!」と興奮して、ますます目が冴えてしまったのを覚えている。それまで割合ライトなラブコメばかり読んでいた私は、「世界の果てで待っていて」の硬質でストイックな世界観にすっかりノックアウトされてしまった。
読み返してみても、やっぱりこの作品は別格。
私は、ストイックな男性が好きなのだ。好きで好きで、でも、伝えることができなくて、心の奥深くに閉じ込め、押し殺したはずの感情が、堰を切ってあふれ出す瞬間。あやうい均衡を破ってほとばしった想いに、その人自身が壊されてゆくところを見たい。
それだから、男同士にたまらなくむらむらしてしまうんだろう。
統一郎と雪彦の、恋とは呼べない、でもただの友人ともいえない関係は私の理想そのもの。いまにも核心に触れてしまいそうで、触れ(られ)ない、ぴんと張りつめた緊張感にぞくぞくする。
ほんの指一本の触れ合いが、情事より官能的になりえるんだってことを、この本に教えられました。