パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

文殊丸

文殊丸 (Holly NOVELS)

文殊丸 (Holly NOVELS)

天桃山綺譚、その二。
瑞調寺、珠王院の高僧・冬弦と、冬弦がこよなく愛する瑞調寺一うつくしい稚児・文殊丸の蜜月編。
「蜜月」といっても、おふたりともたいそう初心で奥手でおくゆかしい方々である。夜毎同衾しながらも、なかなか本懐を遂げるにはいたらないご様子。
今風にいえばいかにも「草食系」な冬弦様とたおやかで女性的な文殊丸は、まったくの百合カップル。正直なところ個人的には萌えの対象外なのだけど、俗世の煩悩を捨て去って読んでもじゅうぶん楽しめるお話なのだ。
高野山で名うての稚児だった円恵さんの色事指南にまっかになり、かたわらで同じ月を眺めては涙を浮かべる。ういういしいふたりの恋模様に癒された。