パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

秒速ゼロマイル

秒速ゼロマイル (ミリオンコミックス  Hertz Series 103)

秒速ゼロマイル (ミリオンコミックス Hertz Series 103)

なんとめずらしい、河川敷の整備工事をめぐる公共事業BL。

両親のいない太一にとって河川敷は義父とはじめて出会った場所。
なにかあると必ず、土手にすわって川を眺める。いつものように河川敷を歩いていたある日、太一は見知らぬ男から声をかけられた。座間と名乗るその男によれば、河川敷の整備工事が持ち上がっているという。思い出の場所がなくなってしまうかもしれない。心のよりどころを失くして消沈する太一を、座間はほうっておけず…。

私も河川敷の目の前のアパートで育ったので、太一に親近感がわいた。川ってほんと、見ていて飽きない。ぼーっと妄想して過ごすにはうってつけの場所。人間観察にも事欠きません。うちの裏の河川敷には、毎日剣道の素振りをしながら土手を歩いている達人風のおじさまとか、週末ごとに中州でラジコンヘリを飛ばしている集団とかいたなあ。
地方自治体にとって河川や道路関係の公共事業というのは重要な財源かつ職業提供の場であって、土建屋やら交付税やら、いろんなしがらみが絡まりあって動いているもの。何の産業もないど田舎地方都市出身者としては、金の話し抜きに公共事業が語られるのにはどうにも違和感が残った。
それでも、無自覚小悪魔な太一くんに振り回される、座間さんの残念な大人っぷりはかわいかった。酔わせてコトに持ち込もうとして自分が沈没とか、なんておろかな…!