パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

その親友と、恋人と。

その親友と、恋人と。 (ディアプラス文庫)

その親友と、恋人と。 (ディアプラス文庫)

情に厚く、世間の言葉に惑わされずに正しいと信じた道を貫き通す。信頼を踏みにじる行為は何があろうと許さないかわりに、自分自身も、信頼してくれる仲間を決して裏切らない。言葉は乱暴でも根は優しい。
ほんとうにかっこいい男とは、頼りになるガキ大将みたいな男のことだと、幼い頃に読んだ少年漫画にすりこみされている私。いまだに二次元では、爽やかで優しくてかっこいい王子様よりも、がさつで乱暴でちょっと無神経なタイプに惹かれてしまう。
この本の攻め・湯上は、まさにそのガキ大将タイプ。しかも対する朝比奈は、トラウマ持ちの美人受け。ストライクどまんなかのカップリングで、大大大満足!
過去の経験から、他人と深く関わり合うことを避けてきた朝比奈。まるで自分のことのように友人を思いやる湯上のみたいな人間は、朝比奈にとってはじめてだった。
湯上が自分のことを「友達」と思ってくれていることがたまらなくうれしい反面、湯上に惹かれる朝比奈はただの「友達」でしかないことに苦しくなってゆく。
「友達」か「恋人」か。どちらかにしかなれないなら、どっちを選ぶ?
この手の二者択一は、BLにはごまんとある展開。でも、朝比奈にとって「友達」は、「恋人」と同じくらいに得がたい存在。「友達」が単なる妥協案じゃないのがよくわかるので、朝比奈の葛藤にリアリティがあった。
ラストのどんでん返しがあまりに渡海さんらしすぎて、思わず吹き出した。シリアスな雰囲気にすっかりのめりこんでいたところで!またしても、一本とられました。