パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

夕暮れに手をつなぎ

夕暮れに手をつなぎ (ディアプラス文庫)

夕暮れに手をつなぎ (ディアプラス文庫)

受けの谷内は妻子に去られ、ひとり寂れた商店街の電器屋を営む47歳。堂々たるオヤジ受けです!
年下イケメンからの情熱的なアプローチにも、動かざること山の如し。どんなに口説かれようがほだされない腰の重さに谷内さんが重ねてきた人生の重みを感じる。


ただ、私が求めるオヤジ受けは、癒し系ではないんだな、ということをあらためて確認した。
人生も折り返し地点を過ぎて、己に対する過度な期待は消えうせたころ。決して自慢できるような暮らしではないが、自分なりの生活にそれなりに満足はしている。長い時間をかけて積み上げてきた地位や経験への自負もある。そんなおじさんにとって、BLで描かれるような「ほかの何を失ってもかまわない一生一度の純愛」なんて、迷惑以外の何ものでもないはず。
男としてのささやかなプライドが若者の盲目な情熱によってぼろぼろに崩される。積み上げてきた土台が、恋の暴力によってぶち壊されるカタストロフこそを味わいたいのだ。
若者が恋の成就で浮かれてるとなりで、オヤジ受けが早くも失う恐怖に慄いていたりしたらすごく萌える。好かれても嫌われても、どっちにしても針のむしろな袋小路なオヤジ受けが読みたい。