パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

HARD LUCK 3 SANTA BABY

HARD LUCK 3 SANTA BABY (ウィングス文庫)

HARD LUCK 3 SANTA BABY (ウィングス文庫)

クリスマス目前、ロサンゼルス市警のお騒がせコンビ・タクヤとエドワードのもとに届いた贈り物は、なんと赤ちゃん!?「キティ」と名づけた未知の生命体に興味津々のタクヤ。子どものお守はタクヤひとりでじゅうぶんだ!と悲鳴を上げるエド。サンタも裸足で逃げ出す狂乱の歳末厳戒態勢は、突然現れた天使によって、ますます手におえない状況に。愛と混乱の赤ちゃん狂詩曲!
タクヤとエドの心のお話は一時休戦。シリーズの中休み的な、スラップスティックコメディだった。
さっそく父親扱いされているエドと、子ども同士で気が合うな、と赤子同然の扱いを受けているタクヤの対比がほほえましくっておかしい。菅野さんの描く、にぎやかな群像劇はほんとうに楽しいな〜。こういうの読んでしまうと、やっぱり小説書いてほしい、と願わずにいられない。
落ちてるものはなんだって拾ってしまう見境なしの優しさ。歳に不相応な持ち家。もので埋め尽くされた部屋。
エドにも口に出すことがはばかられるほどの忘れえぬ記憶があって、その欠落を埋めるようにして、人並みはずれたお人よしや、物を捨てられない性分が形成されたらしいことは、この三巻でもたびたびほのめかされている。
でもエドは、なかなか背負っている荷物を下ろしてはくれないな。彼の性格なら、胸に抱える過去を誰かに告白して楽になろうとするような行為自体、許されないことだ、と考えていそうな気もする。
失うことを恐れて、誰にも触れずにやり過ごすようなことはやめると決めたタクヤ。今度はタクヤが、エドを追っかける番かな。