パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

place

place (Holly NOVELS)

place (Holly NOVELS)

切なくて切なくて、読み終えた後もんどりうちたくなるようなBLが読みたい…!という渇望でいっぱいだったのだけど、ついに真打登場。死にそうにせつない、といえばやっぱりこの人しかいなかった。
優秀だけど、とんでもなく我の強い部下・加賀の扱いに悩まされる営業主任の横山。
何かと自分に突っかかる加賀に、もしかして嫌われているのでは、と胃の痛む思いをしながらも、後輩の過ぎるほどの真面目さを買っている横山は真摯に彼と向き合い続けてきた。
ところが、仕事で大ポカをやらかしてめずらしく落ち込んだ加賀を呑みに連れ出した横山は、酔った加賀から思わぬ告白をされる。
人を愛することを諦めた男と過ぎるほどに恋に臆病な青年の、互いの心臓に触れ合うような手探りの恋に胸をぎゅーぎゅー引き絞られた。
加賀はちっとも空気が読めないうえに、歯に衣着せるということも知らない。無神経で鈍感で自分本位で、実際に周囲にいたら「正直困ります」って思うに違いないトラブル・メーカーなのに、読んでいるうちにだんだんと、この子どもみたいな裏表のなさがいじらしくてたまらなくなってしまう。
孤独なひとりとひとりが、孤独なままで魂を寄り添わせる。どれだけ近づいてもひとりはひとりのままで、でもたしかなぬくもりとかすかな希望だけはある。
なんだかもう哀しいくらいにいとおしい、おろかで不器用で切実な、生きている人間の話だ。