パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

天国まで手が届く

天国まで手が届く (アイスノベルズ)

天国まで手が届く (アイスノベルズ)

著者の初期作。
こつこつ佐藤ラカンを読み進めている。作品の多くが90年代に書かれたもののようで、いまはほとんどが絶版本。古本屋で地道に一期一会を探し求める。
古美術商の家に生まれ16才にしてたしかな審美眼を持つ七夏と、天才少年ともてはやされるほどの画才を持ちながら、両親の望むふつうの大人になろうと自らを抑圧する一晴。ふたりの未熟な才能の卵が、悩み惑い、ときにぶつかりあいながら成長していく青春小説。
とにかく受けがモテモテというのが、佐藤ラカンの持ち味のひとつ。本書でも、かわいくて芯の強い七夏ちゃんはオムファタール・一晴をはじめ、腐れ縁の親友や変態美術教師、ブラコン兄にいたるまで、とにかくあらゆる男たちに愛でられている。
ゲイでもないのに男の子をあたりまえに姫扱いしている、というのはBLの世界ではとりたてて珍しいことじゃないものの、個人的に七夏と一晴の相克する関係をもっとクローズアップしてほしかったので、逆ハーレム状態をいささか陳腐に感じてしまった。