パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

Flower

Flower (白泉社花丸文庫)

Flower (白泉社花丸文庫)

隠れた名作がまた一冊。
ともに食卓を囲むという行為はときに、ひとつ布団にはいるのと同じくらい親密な意味をもつ。それはどちらも、命をわかちあって限りある生を歓びあう行為であるからだ。
よしもとばななの「キッチン」を思い出した。
食べて寝て息をするという、ただそれだけのことができなくなってしまうほどの哀しみが、この世にはあるということ。明るく清潔で気持ちのいい場所で丁寧に暮らすことが、人の魂に及ぼす影響。底まで落っこちた日にも、すべてのひとのうえに変わらず降り注ぐ月明かり。
どんなときも、世界はただうつくしい。