パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

レザナンス

リブレ出版の携帯サイト「リブレ+モバイル」から、単行本未収録の作品をいくつか。
限定冊子用のSSの再録やノベルスの後日談など、ここでしか読めないコンテンツが無料で掲載されています。とくに木原音瀬については、サイン会お礼ペーパーや2010年のAGFで配布された会場限定冊子に収録された番外編ショートなども掲載されているので、ファンは必見です。
久々にチェックしてみたら、噂には聞いたことのあった木原さんのベトナム戦争の小説がアップされているじゃないか。杉原理生の雑誌掲載作も見つけ、よろこび勇んで読む。
ベトナム戦争に派遣された、日系アメリカ人兵士のディール・クスノセ。
彼はうつくしい金髪の青年兵・ウィリアムと行動をともにすることになる。大義や使命も色あせる「殺すか殺されるか」の戦場でなお、自らの正義を貫こうとするウィリアムの潔癖さと危なっかしさに、ディールははげしく苛立たされながらも目を離せなくなる。
戦争というものの凄惨さや残酷さ、そして限界の状況におかれてなお、人間らしくありたいと願う青年たちの葛藤を真正面から描いている。鮮烈なラストシーンには、言葉もなく号泣するほかなかった。
BLとしてはあまりにシビアな内容かもしれないが、ほかではけして味わうことのできないであろう強烈な余韻を残す作品。