パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

おまえさん 上

おまえさん(上) (講談社文庫)

おまえさん(上) (講談社文庫)

箱根駅伝を観戦しながら、宮部みゆき「おまえさん」を読む。
いつもクール&ドライな友人が、読み終わった瞬間アツい感想メールを送信してくるほど、大絶賛していた宮部みゆきの時代もの最新作。
このブログをご覧のとおり、私はBL以外の本をほとんど読みません。「読書家」の人々が好んで読む、ミステリーやSF、ファンタジーといったジャンルはむしろ苦手分野。
学生時代から本好きの友人を多く持ち、シャーロック・ホームズから森博嗣まで、古今東西のミステリーをオススメされてきたにも関わらず、ろくに手にとることもなく通り過ぎてきてしまった。このころからすでに、一対一の人間関係にしか興味がなかったんだな。思い返せば、やおいに目覚めるまえからずっと、少女マンガや恋愛小説といった関係性の物語ばかり読んでました。
たまにミステリーを読んでも、興味をもつのは謎解きではなく、殺人に潜む心の闇や、事件に絡む愛憎劇のほう。心のなかのことにばかり熱中した挙句、そういやこの探偵は何を調べてたんだっけな…なんて置いてきぼりをくらってしまうこともしばしば。
そんなミステリ日和見主義の自分にとって、宮部みゆき作品はまさしく天高くそびえるエベレスト。素敵なホモが出てくるというのならまだしも、本格派のミステリーでこのボリュームだなんて酔狂な…とうずたかく積み上げられた新刊の山を尻目にコミック売り場へと急いでいた。
しかし、オススメしてくれた友人は、貴重な私の本読み仲間。
腐女子でもないのにオススメすればBLすら読んでくれて、萌え話に付き合ってくれる。
彼女との読書報告会は私にとって何よりの気分転換であり、癒しの時間。彼女が熱烈にオススメしてくれる(彼女はあまり作品を手放しで褒め称えたりしない。)ならば、こりゃ読むしかないだろうと。やっぱり、萌えとか楽しさって共有すれば倍になるじゃない!
以前シリーズ1作目の「ぼんくら」は読んでいたこともあり(なぜなら、あらすじに「美少年」という表記があったから…)、じゃあ年末に読もうと決めて借り受けてきていた。


そんなわけで、読み始めた「おまえさん」。
こんな分厚い本、途中でわけがわからなくなりそう…とびくびくしていたのだけど、まったくの杞憂でした。
ミステリーだけあって登場人物も多いのだけど、めちゃくちゃキャラクターがたっている。
主役格であるぼんくら町役人・平四郎と、超弩級の美貌と破格の頭脳を兼ね備えた甥っ子・弓之介。粋な遊び人の弓之介の兄・淳三郎や、心根は正真正銘の男前であるにも関わらず、見目だけがとんでもなく残念な平四郎の同僚・信之輔。十人十色の魅力を備えた男たちがぞくぞくと登場して、めうつりしてしまう!
宮部さんは男の「かわいげ」を書くのがとてもうまい。かっこいい人がかっこいいことをするよりも、かっこいい人のちょっと情けないところや、隠した弱みに惹かれるたちの自分にはたまらないものがある。
魅力的なキャラクターたちにひっぱられて、するすると江戸の本所深川へと入り込んでいけた。
三が日のうちに下巻も読むぞ。