パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

おまえさん 下

おまえさん(下) (講談社文庫)

おまえさん(下) (講談社文庫)

箱根駅伝復路を観戦しながら、無事「おまえさん」下巻も読了。
東洋大学の走りに喝采!圧倒的な強さというものは、なんとまばゆく、なんと残酷なものかと嘆息してしまった。
読んでいて目をひらかれるような言葉が山ほどあった。売れる本には売れるだけの理由があるんだな、としみじみ実感。
ミステリーの身上である、謎解き部分の見事さはいわずもがな。頑丈で壮麗な西洋建築のように緻密に構築されたストーリーに感嘆する。
たったひとつの「事実」を、さまざまな「人の心」をとおして見ることで、事件に潜むいくとおりもの「意味」が立ち現れてくる。ひとつの事実に織り込まれた幾重の情念。人の心の複雑さを丁寧にほぐしていく筆力は圧巻の一言。
それにしても…信之輔がもうすこし見栄えのする男であれば、いくらでも淳三郎×信之輔で妄想できたのになあ!粋な遊び人と、潔癖なまでの真面目男の組み合わせはじつに魅力的。彼らふたりの捕物帳とかどうですかね、宮部先生!
早々に煩悩にまみれて、新年スタートです。