パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

もう二度と離さない

もう二度と離さない (講談社X文庫 ホワイトハート)

もう二度と離さない (講談社X文庫 ホワイトハート)

冒頭一文目にしていきなり、「花咲き乱れるサナトリウム」で「豚の角煮に胸やけ」というサバンナのシロクマ級にミスマッチな描写がくりだされ、いったいどんな話なんだ…と腰がひけそうになったものの、ふたを開ければ意外にもダークでシリアス。
かずはじめMIND ASSASSIN」を思い出した。
心を喪ってしまうほどの出来事が起きたとして、誰もがきっと、己を苦しめ続けるつらい過去は忘れてしまいたいと願うことだろう。
でも、じゃあ忘れてしまえばいいだなんて、誰かに自分の記憶を塗りかえられてしまうというのもまた、ぞっとしない話。やさしい偽りと残酷な真実のどちらかひとつ選べるならば、自分はどちらを選ぶだろう。ちょっと真面目に考えてしまった。