パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

水の春

水の春 (Canna Comics)

水の春 (Canna Comics)

小説の挿絵で見かけて気になっていた「黒沢要」の初コミックス。
まるで高尾滋さんの絵でBLを読んでいるかのような(それもない話じゃないけれど)、清廉で情緒あふれる絵がすてき。色っぽいシーンは最小限なのに、画面の端々までえもいえぬ色気が漂っている。
「ゲイ」と噂される同級生に告白され、揺れ動く少年の心を描いた表題作「水の春」。妻に先立たれた作家に、ひそかに心を寄せる担当編集者のくるおしい想いを描いた「花の雨」。
描かれるのは、ただひたむきに捧げる愛。求めてもらえる何かがあるというならば、ためらいなく差し出せる。駆け引きではなく、奪うでも与えるでもない、愛する人に自分の持てるいちばんいいものを「渡したい」と願う純粋な恋心にうたれました。