パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

ヘブンノウズ

ヘブンノウズ (SHYノベルス279)

ヘブンノウズ (SHYノベルス279)

英田さんの新シリーズは、オカルト・ミステリー。
作家とイラストレーターの組み合わせといえばまず、柏枝真郷「厄介な連中」の変態サド作家・遠野遼一郎と、自殺志願のイラストレーター・宮城篤史のカップルが思い浮かぶ。このふたりも相当な変人コンビだったが、こちらのふたりもなかなかのいい勝負。
母の死により言葉を失った弟を、ひとりで養うイラストレータ志望のフリーター・旭。
ある日旭は、超ベストセラー作家である渋澤の新作のイラストを依頼される。突然舞い込んだ幸運に奮起する旭だが、予想外にマイペースで変わり者な渋澤に旭のペースは乱されっぱなし。
霊がみえる渋澤と、幽霊なんて信じない現実主義者・旭の丁々発止のかけあいは漫才みたいにおもしろい。ふたりの関係はまだはじまったばかりだが、渋澤邸に集う脇役たちもそれぞれに個性的で、今後の展開が楽しみ。
あとがきで英田さんが渋澤先生を「余裕ぶっこき男」と評しているのがツボにはまって、笑いをこらえるのが大変だった。これじゃダンディズムもかたなしだ。果たして余裕を失う渋澤先生は見れるのか、乞うご期待である。