パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

off you go

こわいこわいとずっと避けていると、頭のなかで恐ろしさが結晶化されてどんどんこわくなっていく、みたいなことがあるけど、まさにそれだったんだろう。
一穂ミチの本、じつに一年ぶりに読みました。

off you go (幻冬舎ルチル文庫)

off you go (幻冬舎ルチル文庫)

表紙のふたりの間に横たわる空白にまず目を奪われ、帯の台詞に心を奪われる。

ずっと遊んでようぜ。
俺とお前と静、三人で

子ども同士の交わす、やわらかでかたい指きりみたいな「ずっと一緒に」の約束にすこぶる弱い。そのうえ、男女3人なんて、正直これだけで涙腺がまずい。だって無理だ、そんなの。好きなら好きなほど、ずっといっしょになんていられるわけない。心の椅子は、いつだってひとつきりだ。
でも、果たされるかどうかの打算なんて、幼い彼らの心うちには欠片もない。一転の曇りもない、限りなく永遠に近い「ずっと」。そんな永遠に触れられるのは、ほんの一瞬でしかないのに。
でも、その一瞬がながい人生を照らし続けることもある。そしてそのまぶしさに、べつの何かが見えなくなることも。
読み返すたびになにか発見するというか、気づかされる。何度もひきこまれては揺さぶられ、はっとする。仰ぎみるような気持ちで、好きだと思う。