パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

慰安旅行に連れてって!〜許可証を下さい! 2〜

慰安旅行に連れてって!―許可証をください!(2) (シャレード文庫)

慰安旅行に連れてって!―許可証をください!(2) (シャレード文庫)

「許可証」シリーズ第2弾。一日一冊の許可証シリーズで、今日もなんとかがんばれた。
BL初心者のころ、言葉どおり寝ても覚めても読んでいた「許可証シリーズ」。当時私はまだ学生で、弘や前原より年下だったのだけど、気づけばもう彼らを追い越してしまった。
自分も会社員として働くようになり、許可証のすばらしさをいまあらためて実感しています。弘も前原もひとより抜きん出た何かを持つ、選ばれた人間ではない。世に名を残すことなく一生を終えるであろう、市井のひとだ。ただふたりにはひとより少しだけ多く努力する才能がある。
「組織の一員として働く」ということの厳しさと喜びがこれほど見事に描かれた小説は、BLというジャンルに限らずなかなかないんじゃないか。
「会社の歯車」になるという言葉はまるで全体のために個を失ってしまうかのような負のイメージをともなうが、彼らが懸命に働く姿を見るとそんなことないんだとわかる。ひとりひとりがしっかり自分の役目を果たし、互いにがっちりかみ合ってはじめて、会社という眠らぬ獣の心臓は駆動するのだ。確固とした個がなくては、全体はたちゆかない。
キツイ・キタナイ・キケンが3つ揃った現場での彼らの働きぶりは、けして現代の若者が憧れるものではないだろう。それでも額に汗して働く若者たちの姿は、どんなに優雅なセレブリティたちよりも私の胸を打った。
いつか私も弘や前原のように、全霊の情熱を捧げられるような仕事をしたい。
そう願ったあの日の自分に恥じない仕事ができているかといえば到底胸を張れたもんじゃないけれど、いまもまだふたりの背中を見失ったわけなじゃないんだと、読み返すたび思い出しては、脆弱な情熱に灯をともすんだ。