パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

舟を編む

舟を編む

舟を編む

声をあげて笑いたくなるほど面白く、駆け回りたくなるほど痛快で、そっと見上げた夜空の月のように静謐な。言葉の海はこんなにも豊饒に深く、どこまでも果てしない。
「この言葉を辞書でひいた人が、心強く感じるかどうかを想像してみろ。」
胸にひときわ響いたのは、この一節。
言葉は無力だ。でも、たったひとことが孤独に震える魂を救うこともありえる。
己の無力にうちひしがれ、無限の広がりに慄きながらも、なお言葉の力を信じ続けた辞書編集部員たちの敬意と情熱が編み上げた言葉の海を渡る舟。できることなら私も読んでみたい。
そこに並ぶ言葉たちはきっと、澄んだ月の光のように読むものの心を照らしてくれることだろう。