パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

泣けるBL

泣けるBL

泣けるBL

「泣ける」=「お涙頂戴」という先入見から「泣ける」は個人的に避けがちなキーワードである。
このアンソロジーも、テーマより豪華な執筆陣に惹かれて購入。
榎田さんも木原さんも、とても「らしい」お話だった。この人が「泣き」を描くならこうくるだろうな、と想像していたど真ん中をきた感じ。榎田さんは直球の感動もの、木原さんは絶望のなかにかすかな希望が光る。作家ごとの個性が光る作品が揃っていて読みごたえがあった。
漫画ではヤマシタトモコの表現力が群を抜いていた。ARUKUのシングルファザーの転落劇は、ぜひともつづきが読みたい。読ませてくれ…!
「いっぱい泣けて、最後はハッピーエンド」の売り文句どおり、たしかにすっきり泣ける。
しかし、萌えとストーリー性が両立したBLが読みたいと願う一読者としては、予定調和ばかりじゃつまらないのも事実。心に負担なくすっきり涙を流せるBLは、ストレス解消にはもってこいかもしれない。でも、いつも求めてやまないのは、がつんと心を揺さぶられるような物語なのだ。