パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

ムーンライトマイル

オールトの雲」スピンオフ作。太陽と流星もちょこっと顔を出しています。
女たらしの大学生・大地(太陽の弟)×ひねくれ一途な学芸員・昴。
「is in you」でも思ったけれど、一穂さんは男と男のあいだに生じる微妙なパワーバランスを書くのがうまい。
男の人というのはときとして、勝った負けたが好き嫌いにも勝る生き物。縄張り意識が強い分、手ごわい相手とみるとつい張り合ってしまう。
大地が昴の長年の想い人である恒に感じる複雑な感情は、圭輔が密に感じるそれと似ている。たとえ自分とはちがう人間とわかっていても「男」としての互いを秤にのせずにいられない。妬み、ときに憎しみながらも、意識せずにはいられない。
恋愛とは相反するどろりと暗い情念なのに、これもひとつの「男同士」のありようよね、とついつい萌えてしまう。