パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

erotica

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「エロス」をテーマにした短編集。
SM、リバーシブル、3P、女装のドラァグクイーンまでありとあらゆるシチュエーションを網羅し、かつ読み物としてもすこぶるおもしろい。
ほんとうに気持ちのいいエロとは互いの心が通じあったときに実現できるのだ、というラブストーリーにおける基本事項がしっかりおさえられているから、この短編集はこんなにも素敵にエロいのだろう。
挿絵も表紙の中村明日美子をはじめ、非常に豪華な顔ぶれ。
ありとあらゆる濡れ場が繰り広げられるなか、本の最後を飾る書き下ろし「書生の恋」には唯一、直接的な描写がない。しかし、小説家と書生がやりとりする手紙の行間には、切実な恋情とともに濃密なエロスがにじみ出ている。
エロスというものの奥深さを感じさせてくれる一冊。