パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

愛の裁きを受けろ!

愛の裁きを受けろ! (白泉社花丸文庫)

愛の裁きを受けろ! (白泉社花丸文庫)

昆虫擬人化シリーズ第3弾。
第1弾「愛の巣へ落ちろ!」はおもしろいけど自分の萌えツボとはちがうなと手放したのに、口をきけない受けと聞いて買わずにはおれず。不謹慎かもしれませんが、身体の不自由な受け萌えがあるのだ。

樋口さんの萌えは「健気受けによる攻めザマァ」がデフォルトだけど、この本でついに極めた感がある。
超オレ様な攻め・陶也が、口もきけない、生い先も長くないカイコガの郁から想いを寄せられ、遊んでやるつもりがハマってしまう。想い通じ合ってめでたしめでたしかと思いきや、攻めのこれまでの素行がたたってしっぺ返しをくらわされる。いたって王道な展開なのだけど、陶也と郁、それぞれのおいたちが丁寧に書き込まれているので人格形成に説得力があり、心置きなく王道パターンにのめりこむことができる。

何でも容易く手に入る環境に倦んでいた陶也は、郁に出会ったことで弱いものを守れる大人に成長した。
死と隣り合わせに生きるなかでいつしか愛されることを恐れるようになった郁は、陶也のふかい想いを知って残りの命を精一杯生きようと決意する。
互いに影響しあってふたりが前へ進む姿がうつくしく、陶也の郁への手紙には不覚にも涙が…。
遺伝的に短命な郁がいつまで生きられるかわからないことにはかわりはなく、ハッピーエンドにも一匙のさみしさがにじむけれど、それがいっそうふたりの幸福をかけがいないものにしているのだと思う。
おもしろかった!