パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

内緒の数だけ恋をする

内緒の数だけ恋をする (POE BACKS) (POE BACKS Babyコミックス)

内緒の数だけ恋をする (POE BACKS) (POE BACKS Babyコミックス)

モノローグは最小限にとどめて、うつくしい風景のなかで交わされる会話だけで盛り上げる映画みたいな漫画。
登場人物たちの気持ちがページを繰るごとにだんだんと見えてくる。
アメリカでサーファーとして活躍する幼なじみが突然帰ってくる「ブルーデイズ」もとてもよかったんだけど、個人的に印象的だったのは、弟の秘めた想いを知った兄の心情を訥々と紡いだ「Close to YOU」。
これは同人誌ならではのお話かもしれない。
弟が自分に想いを寄せていることを知った兄は、軽蔑するのでも、受け入れるのでもなく、あくまで肉親としての情をこめて弟を抱きしめた。
なにもかも通じ合うことはなくても、互いに思い合うことはできる。それが「家族」なんだということを感じさせる良作。時を経て、ふたたび「兄弟」として笑い合えるようになったふたりを見届けることのできるラストがいい。
もしBLであることがこういう家族の絆を描くことを阻んでしまうとすれば、とてももったいないことだと思う。このふたりの間に流れるものも、ラブであることに間違いないのだから。