パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

トラットリア闇市

第二次大戦終戦後、イタリアに占領された日本というパラレル設定で繰り広げられる、進駐軍中佐・ジョバンニと闇市のイタリアン食堂店主・健人の腹ペコラブバトル。
グルメ×SF×ハーレクインというてんこもり設定にも、ひるまず描ききる立野さんの引き出しの多さはさすが。
食糧もじゅうぶんに手に入らない状況下で、創意工夫を凝らしてつくられる健人の料理はあらゆる人々の舌とハートを魅了してゆく。
いろんなグルメ漫画がちまたにあふれているけれど、「闇市で作れるイタリアン」ってのはちょっと思いつかなかった。モツとクズ野菜のラグーソースや、ポルチーニ茸のかわりに日本に自生するヤマドリダケを使ったティンバッロ(イタリアのお祝いごとで定番の詰め物料理だろう)など、いったいどんな味なんだろうな〜と想像が膨らみます。
おまけで収録された2001年掲載の短編はうってかわって耽美なお話で、立野さんがつねに時代の一線を走ってきたことを実感させる一冊。