パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

雨月物語

雨月物語 (ダイトコミックス)

雨月物語 (ダイトコミックス)

江戸の怪異小説「雨月物語」に独自の解釈を交えてコミカライズ。

「人は愛しすぎると鬼になる」

募る情念が彼岸へいざなう奇譚集。小野塚カホリの豊かな表現によって、古典にあらたな息吹が吹き込まれている。
帰らぬ夫を待つ妻がうつつのほとりを彷徨う「浅茅が宿」は時を駆けるSFのようだったし、死んだ稚児を想って異形と化した僧侶の業を描く「青頭巾」のすがすがしいラストシーンはファンタジックですらあった。
どれだけの時を経ても、ひとがひとを想うこころは変わらない。だからこそ、昔話ではなくひとつのエンタテイメントとして読めるのだろう。
原典も読んでみたくなった。