パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

トマトのてのひら

トマトのてのひら (H&C Comics  ihr HertZシリーズ 147)

トマトのてのひら (H&C Comics ihr HertZシリーズ 147)

ナイーブでちょっと後ろ暗い感情のこもったデビュー作。こういうじめっとしたBL大好物!
東京でモラトリアムをしていたトマト農家の長男・智裕は、道で拾った傷だらけのチンピラ・勝人に押し倒され、名まえもろくに知らぬままなし崩しに身体の関係を続けていく。
最初は暴力でしかなかった勝人の手が、最後は誰より優しく智裕に触れるようになる。荒んだ暮らしを送る勝人の背後にあるものははっきり語られない。ただ関係が深まるうち勝人が垣間見せる歳相応の表情に、彼のさみしさが透けて見える。
しょっぱなからエロ全開だけど、単なるサービスではなく、身体を重ねるうち、故郷を離れた智裕と根無し草の勝人が互いの孤独を重ねていくのが伝わってきた。
ふたりの田舎暮らしももっと見たかったな〜。