パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

その胸の赤を

その胸の赤を (バーズコミックス ルチルコレクション)

その胸の赤を (バーズコミックス ルチルコレクション)

BL作家は同人で経験を積んだ人がほとんどなので、デビュー作から「描けて当然」な昨今。ひさびさにデビュー作らしいデビュー作を読んだ。
母子家庭で親に顧みられず育った高校生の真。気まぐれな母に連れられて越してきた島にはコンビニすらなく、あけっぴろげな島民たちに真はうまくなじめない。トマト農家の星子(せいじ)はひとりぼっちの真が気にかかり、強引に食卓に招き入れる。やがて星子の家族と過ごす時間は、真にとってかけがえのないものとなっていった。星子もまた胸に痛みを抱えていることに気づいた真は、自分も星子の力になりたいと思うようになる。
はやく一人で生きていけるようになりたいと願っていた真が、たくさんのひとに支えられ、生きる意味を見出していく。BLという以上に、これは真の成長物語なのだと感じた。
「これを伝えたい!」という情熱はひしひしと伝わってくる。あとはその情熱に表現力が伴いさえすれば。このネームのぎこちなさは、単純に漫画を描きなれてないだけな気がする。