パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

同人誌1冊

standard「winter's Tale」
「COLD HEART」番外編2冊目。どうしても秋沢への恐怖心が消えない楠田と、いつまでたっても自分に馴れない楠田に焦れはじめる秋沢。
まあ、あんなことがあったので、ちょっとやそっとではうまくいくことなんてないのはわかっている。というか、常識的に考えれば、うまくいかないほうがいいんじゃないの?という気すらする。どう考えても、楠田にとってはストレスにしかならない関係だからだ。秋沢とともにいる限り、楠田は過去の傷から逃れられない。
あきらめずに楠田にいばらの道を歩かせようとする木原さんはほんとうにどSだなあ、と思うとともに、作者にとって恋愛とは、傷つけあうこととイコールなのかもな、とも思った。誰かを何より大切に想うことと、誰かをめちゃくちゃにしてやりたいと思うことは、かけ離れているようでよく似ている。
秋沢はけして楠田の苦しみを理解しないはずだから(もし理解できるなら、今度こそふたりは終わるだろうし)、うまくいくとすれば、楠田が自分のなかで折り合いをつけるしかない。
あれほど手酷く自分を傷つけた相手が、無邪気に愛をささやいてくるなんて、まるで悪夢のような話だが、これまでも悪夢のような純愛ばかり書いてきた木原音瀬だ。
こんどはこのいばら道の先に、どんな結末を用意しているのか。気長に待っていたい。