パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

鬼月

鬼月 (フラワーコミックスアルファ)

鬼月 (フラワーコミックスアルファ)

「すべての作品に仕掛けがある!」という帯に惹かれて手にとった。
穂積さんを期待したんだけど、どちらかというとCLAMPだったような。
ひとの腕を繋ぐふしぎな力を持つ少年が知った、無知ゆえの己の罪。幽閉された醜悪な王を救った、意思を持たぬ少女のはじめての願い。たったひとつの望みのために罪を重ねる、風変りの妖怪絵師。
ひとりの願いが叶えられれば、べつの誰かが犠牲になる。誰かのためのやさしさは、裏を返せば自己満足の偽善に堕ちる。真実を知ることは、必ずしも幸せだとは限らない。純粋さゆえの過ちを美化し、打算や処世を悪とするかのようなストーリーは、いまの私には潔癖すぎて共感が難しいが、ある一定の世代には訴えかけるものがあると思う。
それにしても、90年代から抜け出してきたような作画に驚いた。少女漫画というには艶がなく、少年漫画というにはセンチメンタル。不思議な作風だな〜と思ったら、サンデーでデビューした作家さんのようで。なるほど、それでこの絵柄なのか。
ターゲットが細分化された現代の漫画市場では、こういう作品は埋もれてしまいやすいだろうなあ…と下世話なことを考えた。ストーリーはおもしろいのだが、どの読者層を狙っているのかイマイチはっきりしない。世界観が中二的なので、もっと若者向けにチューニングしてもいいのかな…でも、そうするとこの独特の雰囲気が消えてしまいそうだよな〜。むずかしい。