パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

同人誌5冊

Prinz「you are my HERO」
はるかとりん、ふたりの関係性を丁寧に繊細にほどき、結わえなおしていく物語。描かれなかった時間の物語をそっと見せてもらっているかのような、原作そのものの空気が封じ込められていて感嘆した。
求めて、試して、となりにいるってことを確かめずにいられないりん。大切な仲間を傷つけたことを悔やんで、深い水の底にもぐっていたはるか。
アニメを見ながらずっと、はるかはいったいどうしたいんだろう?と考えてたけど、そうか、りんにとってはるかがヒーローだったように、はるかにとってもりんはヒーローだったのか。だからあんなに、競い合うことをおそれたのか。ふたりはお互いに片想いっていうまことの言葉、すごく腑に落ちた。
はるかもまた、りんに置いて行かれている未来をおそれているという「ニュートラル ボイエンシー」は自分のなかにはなかった視点と解釈で描かれていて、「あー!そういう見方があったか」と目からうろこ。りんがはるかになれないように、はるかもりんにはなれない。もしかしたら、はるかもそんなあたりまえのことを思い知らされるのが、こわかったのかもしれない。
このふたりがいっしょにいると、従兄弟同士みたく親密なのに、どこかぴりっとした緊張感が漂う。まるで慎重にお互いの距離をはかり合っているような。それはきっと、全神経が相手を意識してるからなんだろうな。はるかがまことといるとき、りんがそうすけといるときのような、安心してさらけ出しているのとはまたちがう。
はるかがりんに理想をあたえたように、りんもはるかの平穏を壊して、はるかに見たことのない世界を見せた。
どちらかが手をひくんじゃなくて、並んで同じところを目指してる。それだけがりんとはるかの「いっしょに」なんだな。カンペキに交わらなくても、いつもお互いの鼓動を感じている。CPとはまたちがう、どこまでも「特別」なふたりがよかった。


DUDE「虹は巡る」ep.1〜4
大長編紫氷。これが読みたくてGWの池袋へ繰り出したんだけど、出かけてったかいがあった〜〜〜!!!藤巻先生が最終巻で、黒バスは「主人公黒子テツヤ側から見た、彼の高校生活の一部」といっていたけど、まさしくこのシリーズは、むらさきばらあつしとひむろたつやの視点からみた彼らの高校生活の一部の物語。こういう原作沿いの長編シリーズがひとつあるだけで、CPへの愛着と解釈が格段に深まる気がする。
どんなに願っても求めるものに届かないひむろの苦悩と、望まぬ才能に縛られて生きてきたむらさきばら。そうして出会ったふたりが、互いの欠けた部分を補い合い、WCのあの一戦へと至る。本編の彼らはやはりただの敵役だ。でもきっと、彼らには彼らなりの葛藤や成長があったにちがいない。それがあのむろちんの涙であり、むらさきばらくんのゾーンだったはずで。
その「あったはず」の過程が丹念に丁寧に描かれていて、ああ、こんな紫氷が読みたかったんだよ!!と感極まった。
むろちんの固まった世界をむらさきばらくんが壊して、むらさきばらくんの冷えた世界をむろちんがあたためて。そうやってふたりが、あきらめたはずの「幸せ」や「たのしい」を取り戻せたなら、そんなにうれしいことはないな…。ふたりで一人前なWエースが大好きだーーー!!!描いてくれてありがとうって気持ちでいっぱい。