パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

エルハンブルグの天使

エルハンブルグの天使 (Feelコミックスファンタジー)

エルハンブルグの天使 (Feelコミックスファンタジー)

二人三脚で国を興した覇王マディスと側仕えのラルヴァン。ふたり同じように歩んできたはずが、つねにひとならざる者からの加護を受けるのはマディスであることを、ラルヴァンは心の奥で妬んでいた。
友を妬む卑怯な自分を打ち消そうとするラルヴァン。しかし、マディスもまた、すべてを呑み込んで笑っているラルヴァンに裏切りの疑念を抱きはじめる。
天使は善でも悪でもなく、ただすべてを見つめているだけ。それなのに、眼に見えないものに翻弄されて身を滅ぼしていくひとの愚かさや悲しさ。そしてふたりの友情の終わりが、うつくしい絵で淡々と描かれている。
ルヴァンもマディスも、己の運命に立ち向かう少年漫画の主人公なんかとは正反対のキャラクターなんだけど、この情けなさが人間らしくもある。