パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

ジャコモ・フォスカリ 1

ジャコモ・フォスカリ 1 (オフィスユーコミックス)

ジャコモ・フォスカリ 1 (オフィスユーコミックス)

1966年、東京。とある大学で西洋史学の客員教授をやっていたイタリア人学者のジャコモ・フォスカリは、行きつけの喫茶店で不思議な魅力を持つ青年・秀助と出会う。うつくしく、どこかあやうげな秀助の佇まいは、かつてジャコモが強く焦がれた友人・アンドレアの姿と重なり、彼を忘れえぬ過去へといざなってゆく。
自分が生まれる前の日本をイタリア人の視点から描くというのは、ヤマザキさんでなければできないアプローチだなぁ、とまずそこに感心した。
ジャコモのアンドレアへの想いは、BLとひと口にいってしまえるものではないのだけれども、あまりに強い執着はやはりどこか恋にも似ている。両家の坊ちゃん育ちだったジャコモは、自由奔放でうつくしいアンドレアへ憧憬とも羨望ともつかない感情を抱き、同時に男同士であるがゆえの嫉妬や劣等感にも苛まれていた。対等な親愛の情とは異なる、複雑に絡まった感情。名まえのつけようもないものだったからこそ、ジャコモ氏は時を経てなお、アンドレアについて考えずにいられないのかもしれない。
火花のように烈しい姉とともに、貧しさのなかを生き抜いてきた秀助。秀助とジャコモ氏の人生は、今後どう交わっていくのか。秀助の秘めた妖しさは、生真面目な学者先生を闇へと引きずりこんでしまいそうでドキドキしてしまう。
長らく2巻が出てないようだが、まったく先の読めない物語なだけにつづきを読んでみたい。