パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

わっちゃんはふうりん

サメマチオとしては初めての時代もの漫画。別名義で描いていた江戸ものBLがよかったので、こちらも楽しみにしていました。
片足を失くして若隠居の稲造。稲造に変わって薬問屋を継いだ妾腹の弟・八衛。八衛が身請けし、稲造の住む家に女中として預けられたりよ。おだやかな日々のうちに愛憎を忍ばせた三人の男女の、奇妙な同居生活。
誰にだって口には出せない妬みや、忘れられない苦しみがある。どんなに望んでも、自分は自分にしかなれない。生きていくうえで誰もが避けがたいかなしみを、おおらかなユーモアとのびやかな絵で包み込んで描いている。
三人のうちの誰かを悪者にするのではなく、三者三様の孤独としあわせに寄り添った物語に心ふるわされた。