パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

鼓動よりつよく、呼吸よりふかく

鼓動よりつよく、呼吸よりふかく (あすかコミックスCL-DX)

鼓動よりつよく、呼吸よりふかく (あすかコミックスCL-DX)

なんと、1ページ目から攻めのお葬式で物語がはじまるという衝撃の展開。死にネタBLは数あれど、回想ではなくリアルに死んだところからスタートってのはちょっとびっくり。
ひそかに想っていた幼なじみの郁弥を、海難事故で亡くした葉月。まるで太陽のように人から愛された郁弥のかわりに、天涯孤独の自分が死ねばよかったという葉月の嘆きを聞きとめたものがいた。山の社に住まう神とも悪魔ともつかぬ異形の力によって、葉月は己の命と引き換えに郁弥を生き返らせる。今生との別れのためにゆるされた時間は十日間。郁弥のためならすべてを差し出してかまわないと思っていた葉月だが、甦った郁弥から思いがけない真剣さで「好きだ」と告げられ心が揺れる。
ひとの心をもてあそぶ神様に手のひらのうえで踊らされながらも、必死に恋をする少年たち。郁弥の死からはじまって、まったく先の読めないサスペンス風の展開がおもしろかった。
ただそれだけに演出とか最後のオチとか、微妙に惜しい感じ。郁弥を生かす代わりに恋を殺すのなら、郁弥がべつの子とハッピーエンドになったり、いっそ葉月のなかから郁弥への恋愛感情が消えるってのもありじゃないか!?(鬼畜)せっかくセオリーから外れた話なので、とことん絶望エンドをやりきってくれてもよかった。